愛着障がいとは?特徴や症状、原因を解説
2024/10/03/
厚生労働省によると、2022年に児童相談所が児童虐待相談として対応した相談の件数は、219,170件とされています。
日本だけでなく世界中で、虐待をはじめとした子どもと家族とのトラブルが問題視されています。
愛着障がいとは、幼少期の不安定な愛着関係が原因で、対人関係や感情調整に困難を生じる障がいです。
家族同士の愛着関係におけるトラブルが解消されない限り、愛着障がいがなくなることはないでしょう。
本記事では、そんな愛着障がいの特徴や症状、原因などを解説します。
Contents
愛着障がいとは
愛着障がいとは、乳幼児期に保護者との安定した愛着関係が形成されなかったことで生じる障がいです。
とくに、虐待やネグレクトを経験した場合に発生しやすいとされています。
愛情や保護を求められなくなるため、他者との信頼関係や親密な関係をうまく築けません。
愛着障がいには、過度に他者に依存する「脱抑制型」と、他者との関わりを避ける「抑制型」があります。
診断基準は、アメリカ精神医学会(APA:American Psychiatric Association)が出版している「精神障がいの診断と統計マニュアル(DSM:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」や世界保健機関(WHO:World Health Organization)が公表している「国際疾病分(ICD:International Classification of Diseases)」に基づいており、症状や行動パターンの違いによって分類されます。
愛着障がいの種類
愛着障がいは、2種類に分類されます。
ここからは、各愛着障がいの特徴を紹介します。
- 反応性アタッチメント障がい
- 脱抑制性対人交流障がい
反応性アタッチメント障がい
反応性アタッチメント障がい(RAD:Reactive Attachment Disorder)とは、対人関係や情緒面での問題が生じる愛着障がいです。
生後5歳までの間に発症する愛着障がいで、他者に対して一貫して感情的な反応を示せない、親密な関係を避ける、または感情を抑制するなどの特徴があります。
さらに、子どもが大人との相互作用に乏しく、他者への信頼や愛情を示さない、または逆に不適切な方法で過度に依存するなどの傾向もあります。
脱抑制性対人交流障がい
脱抑制性対人交流障がい(DSED:Disinhibited Social Engagement Disorder)とは子どもが社会的に過度に外向的で無防備な行動を示す障がいです。
見知らぬ人に対しても躊躇なく接近し、過度に親密な行動を取る傾向があります。
脱抑制性対人交流障がいを持つと、適切な愛着形成がなされず、信頼関係が築けません。
そのため、大人や保護者と健全な関係を築くことが難しいとされています。
脱抑制性対人交流障がいは、主に4歳以降に発症し、成人期まで問題が続くことがあります。
愛着障がいの症状
愛着障がいの症状は、主に社会的および情緒的な問題として現れます。
対人関係では、他者に対して過度な不信感を抱いたり、逆に過度に依存したりすることがあります。
そのため、親密な関係を築くことが難しく、友人関係や恋愛関係、職場での人間関係において問題が生じることも少なくありません。
また、情緒面では、感情のコントロールが難しく、不安感や孤独感、怒りや抑うつに陥りやすい傾向があります。
愛着障がいに見られる情緒の不安定さが原因で、自己肯定感が極度に低くなったり、自分や他者に対して攻撃的な行動を取ったりすることもあります。
愛着障がいの原因
愛着障がいの主な原因は、主に乳幼児期における親子関係や環境の問題です。
愛着形成は、生後6ヶ月から3歳までの間に重要な時期を迎えます。
この時期に、親や養育者からの適切な愛情やケアが欠如すると、安定した愛着が形成されず、愛着障がいのリスクが高まります。
また、虐待やネグレクト、親の精神的問題、家庭内の不安定さなども主な要因です。
施設での養育や頻繁な養育者の交代、孤児院などでの集団生活も愛着形成を妨げます。
こうした環境で育った子どもは、他者との信頼関係を築くことが難しくなり、社会的・情緒的な問題を抱えやすくなります。
愛着障がいの治療法
愛着障がいの治療法はいくつか発見されています。
ここからは、代表的な愛着障がいの治療法を3つ紹介します。
- 認知行動療法
- 精神力動的療法
- 遊戯療法
- 家族療法
- 薬物療法
- 認知行動療法
認知行動療法とは、非適応的な思考や行動パターンを特定し、変えることで心理的問題を改善する治療法です。
認知行動療法では、愛着に関する誤った認識や感情の根源を探り、クライアントがより健康的な思考や行動を実践できるようサポートします。
また、具体的なスキルを学ぶことで、自己肯定感や対人スキルを向上させ、愛着形成に必要な信頼感を築く手助けをします。
認知行動療法のプロセスを通じて、愛着障がいの症状が軽減され、より良い人間関係を構築できるようになるでしょう。
精神力動的療法
精神力動的療法とは、無意識の葛藤や過去の経験が現在の感情や行動に影響を与えると考え、クライアントがその理解を深めることで問題解決を図る治療法です。
精神力動的療法では、クライアントが幼少期の体験や親子関係の影響を理解することで、愛着パターンを明確にし、感情の解放や自己認識の向上を図ります。
また、セラピストとの安全な関係を通じて、新たな愛着体験が形成され、他者との信頼関係を築く能力が養われます。
遊戯療法
遊戯療法は、遊びを通じて感情や思考を表現し、問題を解決する治療法です。
遊戯療法では、子どもが遊びを通じて自分の感情や体験を表現できる環境を提供します。
これにより、内面的な葛藤や不安を安全に表現し、感情の理解を深められます。
また、セラピストは遊びを観察することで、子どもの愛着パターンや対人関係の問題を把握し、適切に介入できるでしょう。
家族療法
家族療法は、家族全体の関係やコミュニケーションを改善し、問題解決を図る心理療法です。
セラピストは、家族メンバーが互いに感情を共有し、理解し合う方法を学び、コミュニケーションの質を向上させるための具体的なスキルを教えます。
家族療法では、家族関係の中で形成されたパターンや役割分担、相互の期待がどのように愛着障がいに影響しているかを探り、家族全員が協力して新しい関係性を築くことで、クライエントだけでなく、家族全体の相互作用やコミュニケーションの改善を目指します。
これにより、家族はより安定した環境を提供できるようになり、愛着障がいを持つ人が安心感や信頼感を取り戻せるでしょう。
薬物療法
薬物療法は、精神障がいの症状を軽減するために、抗うつ薬や抗精神病薬などを使用する治療法です。
愛着障がいの治療において、薬物療法は一般的に主たる治療法ではありません。
しかし、愛着障がいはうつ病や注意欠如・多動症(ADHD:Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)などの他の心理的問題を併発することが多く、それらの症状を軽減するために抗うつ薬、抗不安薬、または気分安定薬が処方されることがあります。
うつ病や注意欠如・多動症について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
一例として、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)は、うつや不安の治療に有効とされており、これらの症状が愛着障がいに関連している場合に処方されることがあります。
薬物療法は、心理療法や家族療法などの他の治療法と組み合わせて用いられることが多く、副作用についても考慮しなければならないため、専門家との入念に相談してください。
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本記事では、愛着障がいの特徴や症状、原因などを解説しました。
愛着障がいを持つ人が自らの状態を理解することは、自己認識を高め、感情や行動の背景を知る手助けとなります。
これにより、適切な対処法を学べるため、人間関係の改善や自己肯定感を向上させられるでしょう。
専門家へ相談することも重要ですが、気軽に愛着障がいについて知りたい場合は、愛着障がいに理解がある人のコミュニティへの参加がおすすめです。
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