コラム

アダルトチルドレンとうつ病の関係について解説

2024/10/03/

みなさんは、「アダルトチルドレン(AC:Adult Children)」と「うつ病」がどのような状態かご存じですか?

アダルトチルドレンとうつ病は、全く別物とされていますが、2つの症状には関連性があるとされています。

本記事では、アダルトチルドレンとうつ病の関係について解説します。

アダルトチルドレンとは

アダルトチルドレン(AC:Adult Children)とは、子どもの頃にアルコール依存症や薬物依存、虐待などの問題を抱えた家庭で育ち、心的外傷を受けたまま大人になった人のことです。

自己肯定感の低さや他者依存、完璧主義、強い孤独感などを持つ傾向があります。

本来は「Adult Children of Alcoholics」の略で、アルコール依存症の親の子どもを意味していました。

しかし、現在では機能不全家族や毒親のもとで育った人全般に適用されます。

アダルトチルドレンは、子ども時代の家庭環境や親の影響が原因となることが多く、育った環境がそのまま大人になった後の対人関係や社会生活に影響を及ぼします。

うつ病とは

うつ病(抑うつ障がい)とは、気分が落ち込んだり、楽しみや興味を失ったりする状態が長期間続く精神障がいです。

通常の気分の変動とは異なり、家庭や仕事、学校生活など、日常のあらゆる面に悪影響を及ぼします。

うつ病の原因は、虐待や大きな喪失、ストレスの多い出来事など、社会的、心理的、生物学的な要因が複雑に絡み合っています。

うつ病の主な症状は、集中力の低下、過度な罪悪感や将来への絶望感、自殺念慮、睡眠障がい、食欲の変化、極度の疲労感などです。

また、うつ病は軽度から重度までさまざまで、単発性、反復性、双極性障がいの一部として発症することがあります。

世界保健機関(WHO:World Health Organization)によると、全世界で約2億8千万人がうつ病を経験しており、とくに女性に多く見られます。

うつ病について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。


アダルトチルドレンがうつ病になりやすい理由

一般的にアダルトチルドレンはうつ病になりやすいとされています。

ここからは、アダルトチルドレンがうつ病になりやすい理由を4つ紹介します。

  1. 性格がうつ病に近い
  2. 思考パターンがうつ病に近い
  3. 生活習慣が悪い
  4. さまざまなストレスを抱えている

性格がうつ病に近い

アダルトチルドレンは、幼少期の家庭環境や親子関係の影響で、自己否定感や完璧主義、柔軟性の欠如などの性格傾向があります。

そのため、ストレスを溜め込みやすく、自分を責めやすくなります。

とくに、責任感が強く、他人の期待に応えようとする「ヒーロータイプ」のアダルトチルドレンは、過度なプレッシャーを感じ、うつ病に陥りやすくなるでしょう。

また、感情の抑圧や周囲への気配りによって、心の負担が増し、うつ病発症のリスクが高まります。

思考パターンがうつ病に近い

アダルトチルドレンは、幼少期に機能不全家庭で育った影響で、自己否定感や完璧主義的な思考パターンを持ちやすく、うつ病のリスクが高まります。

とくに、「否定的認知の三徴」と呼ばれる自己否定、他者や社会への不信、将来への悲観的な見方が特徴的です。

アダルトチルドレンの思考パターンは、自己肯定感の欠如や過去のトラウマに由来し、どのアダルトチルドレンタイプにも共通してみられます。

また、過去の虐待やネグレクト、過干渉などが、自己責任感の欠如や無気力感を助長し、うつ病を引き起こしやすくします。

生活習慣が悪い

機能不全家庭で育つことで生活習慣が乱れやすいことも、アダルトチルドレンがうつ病になりやすいとされる要因のひとつです。

とくに、栄養バランスの悪い食事や、睡眠不足、適度な運動の欠如など、精神的健康に必要な習慣が欠けていることがよくあります。

これにより、セロトニンなどの脳内物質の分泌が不足し、ストレス耐性が低下します。

また、日光を浴びる機会が少ないため、睡眠を促進するメラトニンの生成が妨げられ、ストレスが蓄積されやすいことも要因となるでしょう。

さまざまなストレスを抱えている

アダルトチルドレンは、機能不全家族の環境で育ち、通常以上のストレスにさらされています。

虐待や暴言、育児放棄などの過度なストレスを日常的に経験し、それに伴うトラウマや不安感、自己否定感が強くなります。

さらに、完璧主義や白黒思考といった柔軟性に欠ける思考パターンにより、ストレスの回避が困難となるでしょう。

これらの理由から、アダルトチルドレンは、うつ病に陥りやすい状況にあるといえます。

アダルトチルドレンやうつ病の治療法

アダルトチルドレンやうつ病は、いくつか治療法が確立されています。

ここからは、代表的な治療法を3つ紹介します。

  1. カウンセリング
  2. 認知行動療法
  3. 薬物療法

カウンセリング

アダルトチルドレンやうつ病の治療においてカウンセリングは、相談者が自己理解を深め、抱えている問題を自ら解決していくためにサポートすることを目的としています。

カウンセリングでは、臨床心理士や公認心理師といった専門資格を持つカウンセラーが、相談者と対話を通じて問題の整理や解決への気づきを促します。

カウンセラーは相談者の話を否定せず、受容的な態度で接し、共感的に話を聴くため、患者が自己理解を深め、自己肯定感を高められるでしょう。

認知行動療法

認知行動療法(CBT)は、ストレスや精神的な問題に対する考え方や行動のパターンを見直し、改善することを目指す心理療法です。

アーロン・ベックによってうつ病の治療法として開発されました。

認知行動療法では、出来事に対する「認知(考え)」や「行動」に焦点を当て、そのパターンを把握し、変えていくことによって、感情や身体の反応を改善することを目指します。

一例として、「すれ違った友人に無視された」という出来事をネガティブに解釈してしまう場合、これが悲しい感情や身体的な不調につながることがあります。

また、生活リズムを整えたり、達成感を感じる活動を増やすなどして、行動の幅を広げる「行動活性化」という技法も認知行動療法のひとつです。

行動活性化により、避けがちな状況にも積極的に対処できるようになり、気分の改善が図られます。

薬物療法

薬物療法は、精神障がいの治療において生物学的要因にアプローチする基本的な治療法です。

アダルトチルドレンやうつ病は、脳内の化学的バランスの乱れが深く関与しているため、抗うつ薬や抗精神病薬などを用いて脳内の神経伝達物質のバランスを整えられます。

薬物療法の主な目的は、幻覚や妄想、抑うつ、不安、緊張などの症状を緩和することです。

さらに、症状が改善された後も、再発を防ぐために維持療法として長期的に薬物を使用することが求められます。

再発防止効果を持つ薬剤として、抗精神病薬や抗うつ薬、気分安定薬が用いられます。

薬物療法は1950年代から発展を遂げ、現在では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors)など副作用が少なく効果的な新世代の薬剤が利用されるようになりました。

IRODORIで自身の症状を打ち明けられるコミュニティを形成しよう

本記事では、アダルトチルドレンとうつ病の関係について解説しました。

アダルトチルドレンやうつ病に理解がある人と出会うことは、安心感や共感を得られ、孤立感が軽減されるため重要です。

また、適切な支援や対応を受けやすくなるため、治療や回復の過程でも大きな助けとなります。

しかし、症状の影響でコミュニティ形成へ前向きになれないこともあるでしょう。

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