恋愛は、多くの人にとって人生の大切な要素であり、心の充足感や生きがいをもたらしてくれるものです。
しかし、恋愛は心の支えになる一方で、その関わり方が偏ってしまうと、苦しみや依存を生み出すことがあります。
とくに、自己愛性パーソナリティ障害(NPD:Narcissistic Personality Disorder)を抱える方にとって、恋愛は「自分を肯定してくれる唯一の場所」となりやすい傾向があります。
それにより、恋愛依存に陥ることも少なくありません。
本コラムでは、自己愛性パーソナリティ障害と恋愛依存の関係性について整理しながら、恋愛における特徴や陥りやすい罠、そして健やかな人間関係を築くためのポイントなどを解説します。
Contents
自己愛性パーソナリティ障害とは?
自己愛性パーソナリティ障害(NPD:Narcissistic Personality Disorder)は、自尊心の不安定さと他者からの評価への過敏さを特徴とするパーソナリティ障害です。
「自分が好きすぎる」と誤解されることもありますが、実際には「心の奥に強い劣等感や不安を抱えている」ことが本質にあります。
自己愛性パーソナリティ障害の主な特徴としては、以下のようなものがあります。
- 他者からの承認や賞賛を強く求める
- 自分の価値を実感するために他者の反応に依存しやすい
- 批判や拒絶に過敏で、強い怒りや落ち込みを感じやすい
- 表面的には自信があるように見えても、内面は自己評価が不安定
- 親密な関係でコントロール欲求や過度な期待が表れやすい
自己愛性パーソナリティ障害について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
恋愛依存とは?
恋愛依存とは、恋愛そのものや恋人という存在に過度に執着してしまい、自分の心の安定を相手に委ねてしまう状態のことです。
一例として、以下のような行動や思考が見られます。
- パートナーがいないと生きていけないように感じる
- パートナーの行動を常に確認し、不安になってしまう
- 自分の価値を「愛されているかどうか」によって判断してしまう
- パートナーへ必要以上に期待してしまい、裏切られたと感じやすい
- 関係が壊れることを恐れて過剰に尽くしてしまう
恋愛は本来、互いに支え合うものです。
しかし、依存状態になると、恋愛が「自分の心を埋めるための手段」となってしまいます。
その結果、パートナーにとっても自分にとっても負担が大きくなってしまいます。
自己愛性パーソナリティ障害と恋愛依存のつながり
自己愛性パーソナリティ障害と恋愛依存は、深い関係性を持っています。
ここからは、自己愛性パーソナリティ障害と恋愛依存は関連性があるとされる理由を4つ紹介します。
- 愛されることでしか自己価値を感じられない
- 拒絶や別れへの強い恐怖
- 理想化と失望の繰り返し
- コントロール欲求との結びつき
愛されることでしか自己価値を感じられない
自己愛性パーソナリティ障害を抱える人は、内面に「自分は空っぽなのではないか」、「価値がないのではないか」という根強い不安を持っています。
そのため、自分の存在意義を確認する手段として、外からの愛情や評価を強く求める傾向があります。
とくに、恋愛においては、恋人の「好きだよ」や「一緒にいたい」という言葉や態度が、自分の存在価値を保証してくれるものとして考えてしまうでしょう。
しかし、このような考え方は「自分で自分の価値を感じる力(内的な自尊心)」ではなく「相手が与えてくれる評価(外的な承認)」に依存しているものです。
そのため、愛情表現が少しでも減ると「もう愛されていないのでは」、「自分は捨てられるのでは」と恐怖が芽生え、依存が強化されてしまいます。
拒絶や別れへの強い恐怖
自己愛性パーソナリティ障害の人は、拒絶や批判に対して非常に敏感です。
一例として、恋人から「ちょっと忙しいから会えない」と言われただけでも「嫌われたのではないか」、「もう気持ちが冷めているのではないか」と極端に不安を感じてしまいます。
そのため、パートナーに対する不安を和らげるために、パートナーへ過剰に尽くしたり、連絡を頻繁に取り続けたりします。
こうした行動は、かえってパートナーの重荷となり、関係の悪化を招いてしまうという悪循環を生み出してしまうでしょう。
理想化と失望の繰り返し
自己愛性パーソナリティ障害の人は、パートナーを「理想的な相手」、「完璧な存在」として捉える傾向があります。
そのため、パートナーの小さな優しさや共感を自分にとって特別な意味を持つものとして受け止め、「この人なら自分を救ってくれる」と強く信じ込んでしまうことも珍しくありません。
その一方で、パートナーが自分に完璧に応えてくれなかったり、自分の期待と違う言動を見せたりすると、一気に失望し、「裏切られた」や「こんな人だったなんて」など、激しい感情を抱きやすくなります。
その結果、パートナーを強く求めながら同時に攻撃してしまうという「アンビバレンス(相反する感情の共存)」が起きやすく、恋愛を継続するうえで大きな摩擦が生じてしまいます。
コントロール欲求との結びつき
恋愛依存が強まると、パートナーを「自由な存在」として尊重するよりも、「自分の安心を与えてくれる存在」として扱ってしまいます。
そのため、恋人の行動や考え方に強く干渉したり、「こうしてほしい」や「こうあるべき」という要求を繰り返したりしてしまいます。
このような言動は、一見すると「わがまま」や「支配欲」に見えるでしょう。
しかし、その根底には「相手が離れてしまったら自分は生きていけない」という強烈な不安が隠されています。
このような自己愛性パーソナリティ障害の人からのコントロールは、パートナーにとって大きな負担になります。
その結果、パートナーが距離を取ろうとする → さらに不安が高まる → コントロールを強める、という負のスパイラルが起きてしまうでしょう。
自己愛性パーソナリティ障害の人が健康的な恋愛関係を築くためのポイント
では、自己愛性パーソナリティ障害を抱える人が恋愛依存を乗り越え、健やかな関係を築くにはどうしたらよいのでしょうか。
ここからは、自己愛性パーソナリティ障害の人が健康的な恋愛関係を築くためのポイントを4つ紹介します。
- 自分の価値を恋愛以外で育む
- 感情を言葉で伝えられるようになる
- パートナーの境界を尊重する
- 専門家のサポートを受ける
自分の価値を恋愛以外で育む
自己愛性パーソナリティ障害の人が健康的な恋愛関係を築くためには、恋愛以外でも自分の価値を育みましょう。
自己愛性パーソナリティ障害を抱える方にとって、恋愛は「自分の価値を確かめる大きな手段」になりやすい傾向があります。
しかし、それだけに依存すると、関係性が不安定になってしまうでしょう。
このようなときは、恋人以外で「自分にはこんな魅力がある」、「自分はここで役立っている」と実感できる体験を増やすことが重要です。
成功経験の積み重ねは「恋愛がなくても自分には価値がある」という安心感につながり、恋人への過剰な依存を和らげてくれます。
感情を言葉で伝えられるようになる
自己愛性パーソナリティ障害の人が健康的な恋愛関係を築くためには、自分の感情を言語化できるようになりましょう。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、不安や怒りを「相手を責める行動」や「相手をコントロールする態度」で表現してしまうことがあります。
そこで役立つことが、「Iメッセージ」を使う練習です。
Iメッセージとは、自分の感情や考えを「私は〜と感じる」という形で主語を自分にして伝えるコミュニケーション方法です。
Iメッセージを使うことで、パートナーを攻撃することなく自分の感情を伝えられます。
また、感情を言葉にできるようになると、パートナーとの衝突が減り、信頼関係が深まりやすくなります。
パートナーの境界を尊重する
自己愛性パーソナリティ障害の人が健康的な恋愛関係を築くためには、パートナーの境界を尊重しましょう。
恋愛に依存していると「パートナーのすべてを知りたい」、「パートナーの時間も自分のために使ってほしい」と思うことも珍しくありません。
しかし、誰にでも「一人の時間」や「自分の世界」が必要です。
パートナーの境界を尊重できるほど、逆にパートナーからも信頼され、関係は安定しやすくなります。
専門家のサポートを受ける
自己愛性パーソナリティ障害の人が健康的な恋愛関係を築くためには、専門家のサポートも検討しましょう。
自己愛性パーソナリティ障害や恋愛依存は、自分ひとりの努力だけで克服するのはとても難しいことがあります。
専門家と一緒に取り組むことで、自分では気づけなかったパターンを把握できるため、「どう変えていけばいいのか」という道筋が立ちやすくなります。
自己愛性パーソナリティ障害について相談できる機関について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
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今回は、恋愛における自己愛性パーソナリティ障害の特徴や陥りやすい罠、そして健やかな人間関係を築くためのポイントなどを解説しました。
自己愛性パーソナリティ障害を抱える方にとって、恋愛は心を満たす大切な体験です。
その一方で、恋愛依存という形で苦しみを生むリスクもあります。
「愛されなければ自分には価値がない」という思い込みを和らげたり、自分の価値を恋愛以外でも育んだりすることで、恋愛依存から抜け出しましょう。
そして、健やかな出会いを求めることもまた、人生を豊かにするために重要です。
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